さすらいの諸国漫遊記56-後編-

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2004年7月25日(日曜日)、眠りから覚めたら、夜汽車は大阪に着いた。昨日、高知から夜汽車に乗って、移動しているワケで、宿泊費の節約に役立っている。  

夜汽車から電車に乗り換えて、比叡山坂本という駅を下車し、比叡山を目指す。反対方向に行けば、琵琶湖。関西の水瓶として重要な存在で、昔は「水道の水はまずい」と言われ、汚れていた湖だが、今はどうなっているのだろうか? 関西の水道局もカルキ臭をなくすべく、いろいろと努力していると昔、聞いたことがある。でも、今はどこの家でもミネラルウォーターが大活躍。水道の水が洗いものや風呂水に専心しているようだ。  

話を元に戻し、比叡山に挑むが、道は徐々に登り坂になってゆき、心が高ぶる。昨年は大阪の能勢妙見山にチャレンジし、人の流れに身を任せ、バスに乗ったら、ケーブルカーのりばに着いて、ラクラク登山したが、下山は駅の道がわからず、大変だった。さいわい、東海道新幹線で帰京したから、時間的な余裕はあったが、今回は以前のようにはいかないだろう。時刻は7時を過ぎたばかりで、周辺の住居はまだ目覚めていない様子だ。  

少々登ったところにケーブルカーのりばを見つけたが、料金が高過ぎる。それに8時までお寝んねなので、自分で登るとしよう。東京の山は2つほど登った経験があり、たいしたことなくクリアしたから、“チョロイ”という軽い気持ちでトライする。  

登山道を見つけ、入ると、なんとクサリが通せんぼしていた。なんのためらいもなく突破したが、そのあと、ヘビの姿を見つけてしまい、ビックリすると、そっちも人間の姿に驚いて、すっこんでしまった。さいわい、コブラではなかったようだ。そのあと、トカゲの姿を何度も見ることになる。  

普段、お目にかかれないものに遭遇し、私は「足元に御注意下さい」という東京メトロの放送を思い出すかのように、地面を気にしながら歩く。注意深く歩かないと、ケガをするどころか、命を落とす危険性もある。  

意気揚々と登ってゆくまではよかったが、時間がたっても頂上にたどり着かず、前日の夜に購入したペットボトルのミルクティーを飲み干してしまった。上半身は汗ベッチョリで、これほど壮絶な登山は初めてだ。さいわい、携帯電話は通じる。  

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足取りは悪く、誰ともすれ違わない。朝早いのだから、すれ違わないのはしょうがないが、ノドがかわいて、前日の夜に購入したペットボトルの緑茶を補給し、一歩一歩進むしかない。すると、紀貫之(Tsurayuki Kino)の墓を見つけ、“頂上まで近いぞ”と思ったが、まだまだ先。とうとう、ペットボトルの緑茶も飲み干してしまい、あとは気力をふりしぼるのみとなってしまった。

「カラッ、カラッ、カラッ、カラッ」  

と“希望の光”と思える音色が聞こえた。急いで進むと、ケーブルカーのレールが見えた。すぐそこには益があるものの、頂上の駅は「すぐそこ」と言えるような距離で、カネを払うのはもったいない。私は気力を注入し、苦しくてダウン寸前とはウソのような軽い足取りで、比叡山を登り切った。  

ケーブル延暦寺という駅で、しばらく休憩。長袖のシャツとTシャツを脱いで、しぼると大粒の汗が滝のように流れ落ちた。さいわい、誰も私の上半身を見ていなかったが、汗まみれのシャツ類をこれ以上、着るわけにもいかず、予備用と持ってきたものに着替える。ちなみに私はいつも1日分多めに衣類を入れており、万一に備えているが、予備品で使うのは浜松で足止めを食らい、金山へ引き返して、インターネットカフェに緊急宿泊した2003年8月以来となる。  

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ゴクリとスポーツドリンクを飲み干し、ケーブル延暦寺駅ではカブトムシを飼育していた。夏らしくていい。そして、展望台で景色を見つめるが、綺麗で意外と高いところにある。琵琶湖は透き通っており、写真を人に見せても、わかりづらそうな感じである。  

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ケーブルカーで下山し、石山寺に移動。暑いが、もっと暑いのは瀬田川でカヌーが何度も通っていること。おそらく、大学のサークルの練習と思われるが、オールをこいでいる面々は汗ダクであることに間違いはないだろう。  

京都で昼食と休憩を兼ね、帰京するが、途中、静岡で晩メシ購入のため、立ち寄ると、2005年4月から静岡市は政令指定都市になるという。新幹線〈のぞみ〉を停めようというねらいがあるのかもしれない。


★備考

①今回の記事は、2004年8月に執筆したものです。

②岸田法眼のRailway Blog.
「2004年の汽車旅4-後編-」

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